毎年9月頃に会社から交付される「標準報酬月額決定通知書」をご存じでしょうか。9月に標準報酬月額が改定され、10月から給与天引きされる健康保険料や厚生年金保険料などが変更になります。 Show 本記事では、標準報酬月額決定通知書の内容とチェックポイントを解説します。年に1回通知書を確認することで、給与天引きされる社会保険料や年末調整の所得控除についても理解を深めることができます。
目次
標準報酬月額決定通知書とは標準報酬月額決定通知書とは、標準報酬月額が決定・改定したときに会社がその内容を従業員に連絡する書類です。最初に、標準報酬月額とは何か、標準報酬月額の決定・改定時期などについて説明します。 標準報酬月額は社会保険料や社会保険の給付金額の計算基礎標準報酬月額とは、会社員が勤務先から支給される1ヶ月の報酬(報酬月額)を、図表1の通り50の等級(厚生年金は32の等級)に区分した金額のことです。報酬月額には、基本給のほか通勤手当や残業手当などの各種手当が含まれます。ただし、ボーナスは含めません。 図表1.標準報酬月額 ※()内は厚生年金の等級 出典:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」より筆者作成。 標準報酬月額に基づいて、社会保険料が決まります。社会保険料とは、健康保険料や介護保険料(40歳以上の人)、厚生年金保険料のことです。また、健康保険や厚生年金から支給される次の給付金額を計算するときも、標準報酬月額を基に計算します。 ●傷病手当金(※)の1日当たりの金額 標準報酬月額の決定・改定標準報酬月額の決定または改定には、次の3種類があります。 ●資格取得時の決定(就職して厚生年金や健康保険の被保険者資格を取得したとき) ●会社が4─6月の3ヶ月間の報酬から標準報酬月額を算定し、日本年金機構に届け出
標準報酬月額は、図表2で計算した報酬月額を図表1に当てはめて算定します。 図表2.報酬月額の計算 引用:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」 標準報酬月額決定通知書のチェックポイント標準報酬月額決定通知書の名称や内容は、会社によって異なります。改定された標準報酬月額とともに社会保険料が記載されているケースもあります。 図表3.標準報酬月額決定通知書のイメージ 出典:日本年金機構「通知様式の例」を参考に筆者作成。 通知書のチェックポイントは次の2つです。 ●標準報酬月額
まず、改定された標準報酬月額を確認しましょう。標準報酬月額が高くなれば社会保険料も高くなりますが、社会保険の給付もアップします。負担が増えた分、保障が手厚くなるということです。 次に、社会保険料を確認します。社会保険料の変更は9月分からですが、保険料の給与天引きは翌月給与から行うのが一般的です。10月給与から社会保険料が変更になるため、家計の見直しが必要になるケースもあるでしょう。 通知書に社会保険料の記載がない場合は、保険料は次の料率を使って計算できます。社会保険料は労使折半で支払うため、従業員の負担は「標準報酬月額×各保険料率×1/2」です。 ●厚生年金保険料率:18.3% 標準報酬月額決定通知書を確認して社会保険について理解を深めよう標準報酬月額決定通知書とは、標準報酬月額が決定・改定されたときに、会社がその内容を従業員に連絡する書類です。標準報酬月額は社会保険の保険料や給付金額の計算基礎となるため、標準報酬月額を理解することによって社会保険についての理解が深まります。 毎年9月ごろに会社から交付される標準報酬月額決定通知書を確認して、保険料変更に伴う家計の見直しや社会保険による保障内容の点検を行いましょう。 出典定期的な見直し以外で行う標準報酬月額の改定を「随時改定」といいます。 ▼社会保険の概要や加入条件、雇用保険との違いなどを詳しく知りたい方はこちら 目次
「社会保険の手続きガイドを無料配布中!」 社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。 当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。 ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。 1.社会保険の随時改定(月額変更届)とは社会保険料は賃金に応じて負担額が決められているため、毎年4〜6月までの給与額をベースにして定期的な見直しが入ります。しかし、毎月支給される賃金の手当などに変更があった場合、定期的な見直しを待たずに標準報酬月額を改定します。 この標準報酬月額の改定が「社会保険の随時改定」といい、標準報酬月額を変更する際の届出を「月額変更届」といいます。 1-1. 随時改定で決まった標準報酬月額はいつからいつまで反映されるのか随時改定とは別に定時決定という標準報酬月額の決め方があり、原則として年1回、4月から6月の3ヶ月の報酬額をもとに算出します。このことから、随時改定で決まった標準報酬月額は、届け出を提出した月の4か月後から変更されます。 また、随時改定で決まった標準報酬月額は、変更した月によって採用される期間が異なります。 ①1月から6月の間に随時改定された場合:改定された月から同年8月まで採用 上記のように、定時決定の更新時期に合わせて随時改定の反映時期が決められております。随時改定が反映されるまで3か月あるという点と、採用される期間が事ある点を忘れないようにしましょう。 2.標準報酬月額が確定するタイミング社会保険の随時改定を深く理解するためにも、標準報酬月額が確定するタイミングを把握しておきましょう。 2-1.資格取得時の決定従業員を雇った場合は労働契約に基づいて標準報酬月額を決定し、その年の8月まで使用します。 2-2.定時改定毎年、7月1日になるまでの4〜6月に支払った報酬月額が事業主から提出され、このときの報酬総額を基にして標準報酬月額が決定されます。 なお、この定時改定の対象者は7月1日時点での被保険者の従業員すべてです。 ・6月1日以降に被保険者となった人 ▼定時決定について詳しく確認したい方はこちらをご覧ください 2-3.随時改定「資格取得時の決定」と「定時改定」は決まった時期に標準報酬月額が確定しますが、「随時改定」は時期を問わず、固定的賃金が大きく変動する際に見直しが入ります。 3.社会保険の随時改定を行うための条件3つここまでにお話した社会保険の随時改定は、以下の条件をすべて満たした場合にのみ行われます。先に全体の流れを下記の画像を参考に確認しておきましょう。 出典:日本年金機構「随時改定と月額変更届」 正しく随時改定を実施するためにも、本章にて理解しましょう。 3-1.昇給・降給等により固定的賃金が変動する場合随時改定を行うための条件1つ目は、昇給・降給等により固定的賃金が変動する場合です。 固定的賃金とは、従業員の労働時間や実績に関係なく、基本給や各種手当などの支給額が決まっているものです。 変動した理由が非固定的賃金のみである場合は、随時改定を行うための条件に該当しませんが、定的賃金の金額が大きく変動するケースでは随時改定の検討が必要です。 ・基本給の昇給・降給 3-2.3ヶ月間の支払基礎日数が17日以上である場合随時改定を行うための条件2つ目として、3ヶ月間の支払基礎日数が17日以上である場合があげられます。 支払基礎日数とは、報酬を計算する際の基礎となる日数のことを指します。この支払基礎日数は賃金締日によって変動するものであり、有給休暇は含めるものの欠勤日は含めません。 例えば、定時決定を定める期間である4月~6月を例にとると、給与締め日により支払基礎日数は次のようになります。 ● 毎月15日締めの会社 ●
毎月末締めの会社 ただし、特定適用事業所などによる短時間労働者の場合は11日以上が条件となります。この短時間労働者の定義としては、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。 3-3.変更前後で2等級以上の差がある場合随時改定を行うための条件3つ目は、変更前後で2等級以上の差がある場合です。 4.随時改定を考えるときの注意点随時改定を行う条件は先ほど3つあると解説しましたが、固定的賃金にはどのような項目が含まれ、非固定的賃金にはどのような項目が含まれるのかなど、随時改定の条件を満たすか考える際に勘違いしやすい注意点がありますので、本章ではそちらを解説します。 4-1.固定的賃金には通勤手当などの一部手当を含むまず初めに、固定的賃金には何を含むのかわからなくなってしまう担当の方は多いのではないでしょうか。 固定的賃金は、ある給与計算期間において、毎月必ず同じ金額が支払われる支給項目のことを言います。具体的には、基本給や家族手当、通勤手当などの給与支給項目が固定的賃金に含まれます。 4-2.残業代などの非固定的賃金の変動は対象外上述したように、標準報酬月額の算出には固定的賃金を用います。そのため、非固定的賃金は含まないということを覚えておきましょう。 非固定的賃金の具体的な項目は、 定時決定の期間外において、あからさまに所得が増えた時期がありましたら、それが昇格や降格などが要因なのか、それとも残業時間が長くなったことが要因なのかなどの理由を明らかにしたのちに、随時改定に該当するのか確認しましょう。 5.社会保険の随時改定の手続方法最後に、社会保険の随時改定の手続き方法をみていきましょう。 5-1.月額変更届の入手方法社会保険の随時改定は「月額変更届」の必要事項を記入して提出します。 なお、対象者が複数いる場合は1枚に5名までまとめて記載できます。 5-2.月額変更届の書き方月額変更届を入手したら、必要箇所に記入していきます。 1. 提出日を記入する 個人別記入欄は具体的に、被保険者の整理番号、氏名、生年月日、改定年月などを記入します。 参考:日本年金機構「随時改定と月額変更届」 5-3.月額変更届の提出方法月額変更届の記入が終わったあとは、提出先を確認して提出しましょう。提出先は管轄の年金事務所や事務センターであり、提出方法は窓口に直接持参するほか、郵送や電子申請などがあげられます。 なお、2020年の4月から、特定の法人を対象に電子申請の義務化が始まっているので、自社が当てはまっているか確認したのちに申請方法を決めるようにしましょう。 上記の特定の法人とは、 随時改定に該当している場合は速やかに提出する必要があるため、できるだけ早めに月額変更届を所定の場所に提出しましょう。 また、通常の随時改定であれば添付書類は不要ですが、「年間平均の保険者算定」を申請するときは以下の書類が追加で必要です。 ・年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用) これら書類は日本年金機構のホームページでダウンロードできます。 参考:日本年金機構「主な届書様式の一覧」 6.社会保険の随時改定は速やかに手続きしよう本記事では、随時改定の基礎概要、実施するための条件、書き方や提出方法を解説しました。 ▼その他併せて読みたい関連記事はこちら 「社会保険の手続きガイドを無料配布中!」 社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。 当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。 ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。 標準報酬月額 いつから反映?定時決定で決定した標準報酬月額は9月から翌8月まで適用されます。 年の途中で昇給や降給によって大幅に給与が変わった場合は、月額変更届を提出して随時改定されます。
標準報酬月額 いつの給与?標準報酬月額の決定方法は? 毎年4月から6月の3ヶ月の間に「支払った」給与の額を平均して求めます。
社会保険 標準報酬決定通知書 いつから?┃算定基礎届の結果はいつから反映するか
算定基礎届を日本年金機構へ届け出た事業所には9月下旬ころに<健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書>が届きます。 そこには、10月支給分からの標準報酬月額が記載されていますので、10月支給分以降は、新たな標準報酬月額で給与計算を実施することになります。
社会保険料 計算 何月から?A3:保険料は加入した月から必要となります。 また、保険料は月単位で計算されるため、日割りでの保険料納付はできません。
|