26 January, 2017 「イギリスの料理は不味い」。イギリス人にとっては不名誉な噂ですが、耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。イギリスに留学しようと思っている人も、現地での食生活に不安を感じている人もいるのでは?当のイギリス人もブラックジョークとして口にすることがあるくらいなので、残念ながら全く根拠のない話ではなさそうです。なぜこのように言われるようになったのでしょうか?歴史的背景などからこの噂の真偽について検証し、イギリスの料理に興味がある方に向けて、食事のスタイルや代表的な料理をご紹介します。
||目次||
1. イギリスの食文化
2. イギリス人の1日の食事
3. イギリスの代表的な料理
4. 知らない人は損!ホントはおいしいイギリス料理
イギリスの食文化
イギリスの料理がなぜ不味いと言われるようになったのか知るには、イギリスの食文化に関わる歴史的背景を知ることが鍵となります。
「ジェントルマン」の質素志向
「ジェントルマン」と言うと、今日では礼儀正しく上品な男性のことを指して使われていますが、元々は16世紀以降のイギリスで力を持った、貴族やジェントリーといった支配階級の人々のことでした。ジェントルマンたちは土地を貸して得た収入によって、贅沢な生活をしたり、教育を受けたり、政治活動を行いました。社会的に大きな力を持つ彼らは、あらゆる生活習慣を定義づけしていく中で「質素な食事こそ、ジェントルマンのすべき食事である」としました。これがイギリス料理の発展を遅らせる一つの原因になったのです。
産業革命の弊害
18世紀に始まった産業革命により、イギリスでは農村部から都市部への移民が一気に進み、労働者たちは過酷な条件での労働を強いられました。都市部に移動したことで、労働者たちは野菜や乳製品を自給できなくなり、食料品店で買い求める簡素な食事が主流となりました。こうして労働者たちの間でも伝統料理が作られなくなり、フィッシュアンドチップスなどが普及していきました。
客が味付けできるようにもてなす
イギリスの伝統的な料理は、味付けがされていない場合が多く見られます。塩やコショウなどの調味料が貴重品とされた時代、調味料を好きなだけ使えるように食卓に並べることが最上級のもてなしであるとされました。客が自分で味付けをするためには、調理の際にはあまり味付けをしないことになります。それがそのまま伝統として残り、現在でも調理の際にはほとんど味付けがなされず、客が自分の好みによって、卓上の調味料で味を調えて食べる場合があるのです。シンプルな調理や味付けが好まれるのには、このような理由が一つの説として言われています。
正しく評価されてこなかったイギリス料理
イギリスでは、歴史的に食事に重きが置かれてこなかったために、特有の美食文化と呼べるものが発達しませんでした。また、素材を活かしたシンプルな調理法や味付けは他国の人たちにとって物足りなく感じられたのでしょう。必ずしも「イギリスの食べ物が不味い」というわけではなく、正しく評価されてこなかっただけなのです。おいしいイギリスの料理もたくさんあります。都市部でも洗練された料理を味わえるレストランが増え、その質の高さは他国にも引けを取らない素晴らしいものです。かつてのイギリス料理に対するマイナスイメージは払拭されつつあります。
イギリス人の1日の食事
イギリスの人たちはどのような食事をとっているのか、朝食から夕食まで代表的なメニューをご紹介します。
朝食
イギリスの伝統的な朝食として知られる「イングリッシュ・ブレックファスト」はイングランドでの呼び名で、「フル・ブレックファスト」とも言います。薄めにスライスしたトーストに、目玉焼きなどの卵、ソーセージ、ベーコン、ベイクドビーンズやトマト、ハッシュドポテト、マッシュルームなどが豪華に添えられた朝食のことで、ホテルだけでなくパブでも気軽に食べられます。こうしたクラシックな朝食は、一般的な家庭では休日など時間に余裕があるときに好んで食べられ、平日の忙しい朝にはトーストやシリアル、ポリッジと呼ばれるオートミールなどが食べられています。ポリッジは牛乳を入れてレンジで温めたもので、はちみつやフルーツを入れて食べる人もいます。ヘルシーで栄養価が高く、腹持ちも良いのが特徴です。
昼食
お弁当を持参したり売店で買ったりして、サンドイッチやサラダを食べる人がほとんどです。ジャケットポテトと呼ばれる、ベイクドポテトにチーズやベイクドビーンズをトッピングしたものや、クリスプ(ポテトチップス)を食べる人もいます。また、午後2時から午後5時頃はアフタヌーンティーの時間帯です。カフェやレストランでも専用のメニューが出されます。おやつに人気のリーズナブルな「クリームティー」や、サンドイッチやデザートも含まれた軽食に近い「アフタヌーンティー」、アフタヌーンティーよりも遅い時間に楽しむ「ハイティー」があります。
夕食
ローストしたり煮込んだりした肉や野菜にジャガイモを添えたものや、パスタ、ミートパイなどが主な夕食のメニューですが、その他にカレーや中華風の炒め物なども食べられています。オーブンで温めれば食べられる食品を買って食べる家庭もあります。「サンデーロースト」は、その名の通り日曜日に家族で食卓を囲み、ローストした肉を食べるという伝統的なイギリス料理です。牛や羊、鶏などをローストしたものにローストポテトや野菜、ヨークシャー・プディングと呼ばれるシュークリームの皮のような生地の食べ物を添え、グレイビーソースをかけて食べます。イギリスの人たちは日曜にサンデーローストを食べながら、家族や友達とゆっくり過ごすひとときを楽しみにしています。
イギリスの代表的な料理
イギリスで伝統的に食べられている料理には、日本ではあまり知られていない魅力的なメニューや個性的なメニューがあります。
スコッチエッグ
下味を付けたひき肉でゆで卵を包み、パン粉をまぶして揚げた料理で、イギリスで人気のフィンガーフードです。冷めてもおいしいので、パブやレストランでは軽食やおつまみとして、家庭ではお弁当にも入れられる定番の一品です。
ブラックプディング
プディングと言ってもデザートではなく、豚の血を混ぜて作られたソーセージのことです。肉は使わず、豚の血にスパイスやオートミールなどを加えて腸詰めにし、ゆでて火を通したもので、その名の通り真っ黒な見た目が特徴的です。レバーのような味で、ソテーしたりサラダに混ぜたりして食べます。
フィッシュアンドチップス
タラなどの白身魚のフライとチップスの組み合わせにレモンやタルタルソース、グリンピースのピューレなどが添えられた、イギリスでは最もポピュラーなファストフードです。日本のフライドポテトのことをチップスと言います。魚のフライの衣には小麦粉と卵、水もしくはビールを使い、軽くてサクサクとした食感です。塩とたっぷりのモルトビネガーをかけていただくのがイギリス流の食べ方です。
スターゲイジーパイ
フィッシュパイの一種で、イングランド南西部コーンウォール地方の伝統料理として知られています。ジャガイモやタマネギをソテーしてホワイトソースで和え、イワシやニシンなどとパイで包みます。パイ生地からは魚の頭が突き出しており、魚が星空を見上げているように見えることから、その名が付いたと言われるユニークな料理です。
ハギス
スコットランドの名物で、羊の内臓、タマネギ、オートミール、ハーブ類などを羊の胃袋に詰めて煮たり茹でたりした食べ物です。スコットランドの人たちは、スコッチ・ウイスキーのおつまみとして食べています。
知らない人は損!ホントはおいしいイギリス料理
調理法や味付けから、これまでイギリスの料理は不味いと言われてきました。しかし、それも過去のことで、意外と知られていない魅力的なイギリス料理はたくさんあります。また、伝統料理とは少し異なりますが、イギリスではインド料理や中華料理なども根付いており、本国とは一味違ったおいしさを楽しむことができます。都市部のレストランと郊外のパブ、家庭料理とを食べ比べてみても、それぞれ異なる料理を味わうことができるので、ぜひ現地を訪れる際には新たなおいしさを発見してみてください。
「イギリス料理はまずい」と、よくジョークとしていわれているのを耳にしたことがあるでしょう。しかし、それはあくまでも過去のお話で、現代のイギリス料理はおいしいものがたくさんありますし、おいしいレストランもイギリス国内にたくさん存在しています。
この記事では、おいしいイギリス料理の代表や、そもそもなぜイギリス料理はまずいといわれているのかなど、イギリス料理についてのさまざまな話題を紹介します。この記事を読んで、イギリス料理への理解を深めていただければ嬉しいです!
イギリスへ留学に行った際はぜひ参考にしてイギリスの料理を堪能してみてください!
CONTENTS
- 1 最近のイギリス料理はそんなにまずくない!?
- 2 イギリスの料理がまずいといわれているのはなぜ?
- 2.1 食にあまり興味がない
- 2.2 味付けが薄い
- 2.3 あまり手の込んだ調理をしない
- 3 おいしいとされているイギリスの料理3選
- 3.1 フィッシュアンドチップス
- 3.2 スコーン
- 3.3 シェパードパイ
- 4 挑戦するには勇気が必要かも…独特なイギリス料理3選
- 4.1 ブラック・プディング
- 4.2 ウナギのゼリー寄せ
- 4.3 トード・イン・ザ・ホール
- 5 まとめ
最近のイギリス料理はそんなにまずくない!?
イギリス料理は今でも「まずい」といわれることの多い料理です。しかし、最近のイギリス料理はすべてまずいというわけではなく、おいしいものもたくさん生まれています。イギリス料理がまずいといわれていたのは過去の話で、イギリスの食文化は大きく変わり、進化しているのです。
イギリスの料理の変化を象徴するかのように、イギリス料理の展覧会などが日本でもおこなわれるようになっています。定番のものから最近生まれたイギリスの新しい料理まで、幅広く出品されているのです。
イギリス料理がなぜまずいといわれるようになったのかは、次に紹介します。イギリス料理の過去のルーツを知ることで現代のイギリス料理がより美味しく感じてくるかもしれません。
イギリスの料理がまずいといわれているのはなぜ?
イギリス料理がまずいといわれているのには、いくつかの理由があります。それぞれの理由は、イギリス人の国民性やイギリスの文化にもしっかりつながっているものばかりといえるでしょう。ここでは主に3つの理由を解説していきます。
食にあまり興味がない
イギリスは、島国という環境が関係して十分な食材が供給されなかったり、宗教上の都合で野菜しか食べなかったりする人が昔からたくさんいたといわれています。その文化背景が現代にも影響していて、食にあまり関心を向けない国民性が根付いたという見方があるようです。
味付けが薄い
イギリス料理は味付けが薄いものが多いため、そのまま食べるとおいしくないと感じてしまうようです。それはイギリスであまりしっかり味付けをするという文化がなく、味付けを人それぞれの感覚に任せている部分があるからといわれています。
逆をいえば自分で好みの味付けにすることができるので、味のバリエーションが効くという意味ではいいかもしれませんね。
あまり手の込んだ調理をしない
イギリス料理は、あまり手の込んだ調理方法をせず、ただゆでたり揚げたり、焼いたりするだけの場合が多いようです。その理由は産業革命時代にあるとされています。
産業革命のころイギリスでは、農村が減少して食料は貴重になったうえ、労働時間が増え、工場などによる衛生的な問題も出てきたのです。そのため手の込んだ料理をする余裕はなく、素早く、衛生的に、まるごと食料を使うために、火を通すだけのシンプルな食事が増えていったと考えられています。
おいしいとされているイギリスの料理3選
イギリス料理は「まずい」といわれてきたのは確かです。しかし、先にもお伝えしたとおりイギリス料理は日々進化し、おいしいものもたくさん出てきています。以下で主なおいしいイギリス料理を3つ紹介しますので、現地でぜひ食べてみましょう。
フィッシュアンドチップス
こちらはイギリス料理のなかでも特に定番のものです。日本でおこなわれるイギリス料理の展覧会でも必ずといっていいほど出品されていて、イギリス料理を提供しているお店でもメニューに外せないものとなっています。
フィッシュアンドチップスはフライドポテトと、揚げた白身魚がワンプレートで出てきます。これだけだと少し味気ない気もしますが、付属のタルタルソースなどのバリエーション豊富なソースに付けて食べるととてもおいしくなるでしょう。
スコーン
イギリスを代表するスイーツの1つがスコーンです。日本でも人気で、おしゃれなカフェなどではメニューに載っていることもあります。スコーン自体にほんのり甘い味がついていたり、生地にトッピングが練り込まれていたりするので、それだけでもおいしいです。
さらにジャムやバターなどを付けて食べるとより一層おいしくなります。
シェパードパイ
イギリスにはパイ料理がいくつかありますが、そのなかでも特におすすめなのが「シェパードパイ」です。野菜やミートソースなどを混ぜ込んだものを、ジャガイモで作ったパイで包み込みオーブンで焼いたものです。特にジャガイモ、ミートソース好きの人にはたまらない一品となっています。
挑戦するには勇気が必要かも…独特なイギリス料理3選
ここで、おいしい料理とはまた別に、イギリス料理のなかでも独特な料理を紹介します。食べるのには少し勇気がいるものもあるかもしれませんが、どれもイギリスでしか食べることのできない珍しいものなのでぜひトライしてみましょう。
イギリス料理がまずいといわれるのは、これらの独特な料理を見た目だけで判断しているからかもしれませんが、どれも美味しいものなので安心してください。
ブラック・プディング
名前からしても少し食べることに抵抗してしまいそうな料理ですね。ブラック・プディングは豚の血を、豚の脂身などとともに腸詰めにしたソーセージのことをいいます。別名「ブラッドソーセージ」ともいわれていて、見た目も赤黒く少し焦げたソーセージのようです。味は通常のソーセージよりも脂が少なくあっさりしているため、ヘルシーなものが好きな方にはおすすめだといえるでしょう。
ウナギのゼリー寄せ
もともとは、ロンドンで労働に従事していた労働者の間で食されていたイギリスの定番料理です。ウナギが入っているので高級そうに見えますが、イギリスではウナギを安く仕入れることができるのか値段は高くありません。見た目が茶色っぽいためあまり見栄えがよくありませんが、ウナギが好きな方はおいしく食べられるでしょう。
トード・イン・ザ・ホール
イギリス料理のなかでももっともインパクトの強いネーミングの料理がこのトード・イン・ザ・ホールです。この料理は日本語にすると「穴のなかのひきがえる」という意味になります。だからといってかえるが入っているわけではなく、ソーセージをプディングにしたものがオーブンで焼かれて提供されるのです。味はとてもおいしいので、名前にだまされず食べてみることがおすすめです。
まとめ
イギリス料理がまずいといわれている理由はさまざまなものがあります。たとえばイギリス人が食にあまり興味がなかったり、味付けを薄くする文化があったり、あまり手の込んだ調理をしないことが代表的な理由です。
イギリス人料理のなかでもおいしいといわれているのは、フィッシュアンドチップスやスコーン、シェパードパイなどです。日本ではそこまで定番ではありませんが、現地では食べることのできるお店もたくさんありますのでぜひ食べてみることをおすすめします。
イギリス料理は、昔から世界的に「まずい」といわれてきました。しかしそれはあくまで過去のお話で、現代のイギリス料理にはおいしいものがたくさんあります。イギリスの食文化も日々進化しているので、偏見にとらわれず、さまざまなイギリス料理を食べてみてください。
歴史ある文化や伝統が色濃く残るイギリスは、古い伝統も守りながらも、 常に流行の発信地としてファッション・アート・音楽・考え方や技術などを生み出し世界中に発信している国としても有名。 英語教育にも古い歴史をもち、語学学校の質や教育レベルも世界的に高いです。 英語発祥の地として、上品なクイーンズイングリッシュを学ぶことができることが魅力。 多国籍国家でもあるため国際色豊かで留学生でも住みやすい雰囲気があります。 ヨーロッパ各国へ小旅行を楽しむこともできる、ヨーロッパの魅力たっぷりの国です。
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